なぜ、性の多様性について 知らないのか
掲載日:2022年10月17日/更新日:2025年2月12日
『にじのかけはし』第14回より
読者から「今まで知らなかったことが、たくさんあったと気づかされた」という感想を複数もらいました。今回は、なぜ、私たちは性の多様性についての知識がないのか、掘り下げていきます。
5月に私の所属する大学院での研究成果が、論文になりました。テーマは、日本の大学の医学部におけるLGBTQの教育の実態調査です。
調査の結果、臨床前教育でLGBTQについて教えていた学校は52.5%で、まったく教えていない学校は30.5%でした。9年前に米国、カナダで行われた調査では、臨床前教育で教えていなかった学校は6.8%であり、大きな差がありました(Yoshida, E. 2022. 参考文献④)。このように医学教育において、学ぶ機会が限られているという現実があります。
また、”自分の周りにLGBTQの人はいない”と感じていることも、関心を持ちにくい要因の1つかもしれません。イプソス株式会社の27カ国を対象とした調査では、親戚、友人、同僚のなかにレズビアン/ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人がいると答えた人は、日本でそれぞれ7%、4%、4%だったのに対し、27カ国全体の平均は42%、24%、10%でした(Ipsos. 2021. 参考文献⑤)。
これまでに行われた調査結果から、日本のLGBTQの人口規模が諸外国に比べて低いということはないと推測されるにもかかわらず、日本ではLGBTQの人はとても見えにくいという現状があるとわかります。
学校教育でも性の多様性について学ぶ機会が限られていることが、大きな課題としてあげられます。日高庸晴先生による小中高・特別支援学校の2万人を超える教員を対象とした調査では、「同性愛について教える必要があると思う」との回答74.7%、「性別違和や性同一性障害について教える必要があると思う」との回答85.7%に対し、「実際に授業で取り入れた」という回答は14~15%程度にとどまりました(日高庸晴. 2021. 文献⑥)。
「知らなかったことがたくさん!」とショックを受けている人もいるかもしれませんが、日本のこのような現状を考えると、仕方がないことかもしれません。ただ、知識がないことで差別的なことをしてしまった場合には「仕方ない」とは言えないでしょう。今日から、いっしょに学び、また学ぶことのできる機会を増やしていきましょう。


参考:『日本の医学部・医科大学におけるLGBT未教育の割合』2022年5月19日
東京慈恵会医科大学(報道発表資料)
http://www.jikei.ac.jp/news/pdf/press_release_20220519.pdf
文献④
Yoshida E, et al. Cross-sectional survey of education on LGBT content in
medical schools in Japan. BMJ Open. 2022; 12: e057573.
文献⑤
Ipsos. LGBT+Pride 2021 Global Survey. 2021.
URL:https://www.ipsos.com/sites/default/files/ct/news/documents/2021-06/LGBT%20Pride%202021%20Global%20Survey%20Report_3.pdf
文献⑥
日高庸晴. 子どもの“人生を変える”先生の言葉があります.
2021.
URL:https://health-issue.jp/teachers_survey_2019.pdf