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声をあげることへの抵抗はどこから?

掲載日:2022年11月21日/更新日:2025年2月12日

『にじのかけはし』第16回より

私は2018年にLGBTQ当事者であることをカミングアウトし、講演 活動を開始しました。当初は講演が無事に終わっても、家に帰るとひど く落ち込むことがありました。当事者というだけで壇上に上がり、自分 事でもある課題にとりくんでほしいと声をあげることに対し、申し訳な いような、恥ずかしいような気持ちに襲われていたのです。

そんな気持ちは今ではまったくなくなりました。きっかけは2018年夏 のカナダへの医療視察でした。現地でSDHに関するとりくみについて 学ぶなかで、LGBTQと医療に関することが他のトピックと同じよう にオープンに話し合われ、LGBTQ当事者の医療スタッフも患者も当 たり前のようにカミングアウトして発言していました。当時の日本では、 まだLGBTQと医療についてオープンに話をするような場はほとんど ない状況だったので、大きな衝撃を受けました。

また視察中に患者さんから聞いたデモの話が印象に残りました。カナ ダのオンタリオ州では、2015年に8歳で性的指向、性自認という概念を 声をあげることへの抵抗はどこから? 第16回 35 学ぶ画期的な性教育の指針が定められました。ところが、2018年に保守 派の州長が就任すると、突然この指針が中止され、なんと20年も前の1998 年の性教育指針に沿うよう命令が下されました。この決定に対し、オン タリオ州内の100以上の高校から4万人を超える学生、教員などが反対の 意思を示すデモ行動を起こしたそうです。この話から、私は日本で育つ なかで「人権を守られていないと感じた時には、声をあげてもいいのだ」 という感覚を持てていなかったことに気づきました。現在、世界では33 カ国で同性婚が認められていますが、これも誰かが声をあげた結果だと 言えます。

今では、どんな人でも安心して暮らせる社会にしていきたいという願 いに対して、恥ずかしさを感じることはなくなりました。2018年からの 4年間で、声をあげることで社会は少しずつ良くなっていくのだという 実感も持てるようになりました。

しかし同時に、自分と異なる考えの人たちの声によって、社会が変わ っていくことも目の当たりにしています。その1つとして、次回はアメ リカでの中絶に関する動きについてご紹介します。


参考:「LGBT当事者医師としてのトロント医療視察での学び」吉田絵理子 (民医連医療 No.560/2019年4月号)

参考:シリーズLGBT vol.2「誰もが当事者~医療者として個人として向き合おう ~」メディウイング【2020 Vol.77 SUMMER】電子版 https://aequalis.jp/ikei_gakusei/medi_wing/vol77/HTML5/ pc.html#/page/2