職員の健康を守るページ

『健康で働きつづけられる職場づくり』序章|はじめに

掲載日:2025年12月15日/更新日:2025年12月15日

この資料について

民医連における「健康で働きつづけられる職場づくり」への取り組み

全日本民主医療機関連合会は「働くひとびとの医療機関」として結成され、2023年に70周年を迎えました。民医連綱領を羅針盤とした各地の取り組みは、2年に1回開催される総会で到達と課題などが整理され、全国の職員が協働して、総会方針を決定しています。「健康で働き続けられる職場づくり」に対しての到達点を確認し、社会の変化から求められる課題にどう取り組んでいくかについては総会方針に反映されています。

2002年に「職員の健康管理プロジェクト」を設置、2003年には「民医連職員の健康を守る交流集会」が初めて開催されました。2004年には、このパンフレットのもととなる「健康で働きつづけるために(案)」が発行されました。

37回総会方針(2006年)において「健康職場の5つの視点」、38回総会方針(2008年)において「健康職場づくり7つの課題」を掲げ、職員の健康維持増進、職場環境改善を進める方向性を確認しました。私たち医療・介護職は患者の健康・安全に目を向けるだけでなく、私たち自身の健康・安全にも目を向ける必要があります。

第3版を発刊後、職員の健康を守る交流集会を2014年1月、2016年1月、2017年12月、2019年12月(第9回)、2021年11月に開催しました。2021年11月はコロナ禍のため、皆で実地に集まることが困難な状況であったため、オンラインで開催しました。

2015年6月にはストレスチェックセミナー、2021年6月にはコロナ禍での職員のヘルスケア交流集会、2022年6月には労働安全衛生そもそもセミナー、2022年11月にはヘルスケアチーム実践交流セミナー〜職員のメンタルヘルスをテーマに〜を開催しました。

2019年4月から2020年3月まで「民医連医療」誌に“ 新・働き続けられる職場づくり”を、2021年5月から2022年6月まで「民医連新聞」に“ みんなで実践 職員守るヘルスケア” を連載しました。2021年10月の「民医連医療」誌ではコロナ禍での職員のヘルスケアについて特集記事を掲載しました。

2020年5月には「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する職員のヘルスケア指針」を発刊し、12月にはversion2(増補改訂版)を発刊しました。また、2020年5月以降、職員の健康を守る「学習動画シリーズ」を作成し、2022年12月までに17本をアップロード、インターネットで学習できる環境を充実させました。

 

コロナ禍で集まる事が困難な状況の中で、民医連の全国の事業所から良好事例を学ぶ機会を設け、健康で働きつづけられる職場づくりに「どのように取り組めばよいか分からない」という悩みを解消する環境づくりが進みました。皆さんの職場において、これらの教育資材が活用され健康で働き続けられる職場づくりの取り組みが更に進むことを期待しています。

法律を守ることだけでは健康を守ることができない時代にどう対応するか

日本には、労働者の安全と健康に関係する法律として労働安全衛生法があります。1972年に制定されました。今から50年前、日本が経済成長していた時代です。この50年、時代ごとに社会問題となったこと(2000年代でいうと長時間労働やストレスチェックなど)を受けて改正され、その度に専門家が話し合い漏れのないように加筆されていくため、重厚な読み解きにくい辞書のような状態となっています。

そのため、職場の安全衛生に取り組もうと考えても、“ 何をしていいのか分からない”ということが起こっています。その状態を解決するのに役に立つのが“ そもそも” と考えることです。“ そもそも” なぜ衛生委員会を行うのか?なぜ健康診断を行うのか?なぜ長時間労働を行った労働者に面談を行うのか?と考えていくのです。そして、どの項目の優先順位が高いかを考え、取り組む順番を決定します。事業場ごとに課題やボトルネックは違うはずです。課題やボトルネックを直視しなければ、本質的な改善は見込めません。

「法律に書いてあるから、やらなければならない」という考えでは不十分です。法律に書いていることを守っていたとしても、法律はコロナ禍のような新しい衛生課題に対応していません。法律を守るだけでは、健康を守ることができない時代になっていると考えられます。”そもそも”を見つめ直し、自主的・自律的に取り組んで行く必要があります。“ 健康で働き続けられる” ための活動に取り組みましょう。この冊子を活用して、みなさんの職場がより安全で働きやすい職場になることを目指しましょう。



労働災害を防止することは、職場における安全衛生活動の“そもそも”のひとつ

働いている最中に怪我をすること・病気になることを労働災害(労災)といいます。正確な表現では、労働者が業務遂行中に業務に起因して受けた業務上の災害のことで、業務上の負傷、業務上の疾病及び死亡のことを労働災害といいます。厚生労働省は、2021年の日本における労災による死亡者は867人、死傷者は149,818人と統計を発表しています。統計で発表される死傷者数は休業4日以上の人数です。不休災害や休業1-3日の労災は含みません。

安全委員会および衛生委員会を開催する大きな目的(そもそも)のひとつとして、労働災害の防止が挙げられます。労災が発生した場合には、委員会で「予防することはできなかったのか?」を考え、今後このような労災を起こさないために対策を講じることを話し合い決める必要があります。労災のなかには予測不可能なものや簡単に対策を講じることができないものもあります。また、近年増加傾向の転倒災害は、職場の環境要因のみならず、働く人の高年齢化による身体能力および機能の低下も影響しています。

労災について、また労災の芽となることについて、委員会や職場巡視を通じて、みんなの意見を出し合い、改善を進めましょう。

いのちと健康を守るために、格差と貧困が拡大する社会を是正しなければならない

世の中の99%以上の人から搾取することによって、ごく一握りの階級が富を独占している状況を生み出しています。この仕組みを維持する情勢が続く限り、格差と貧困は拡大し、是正されることはありません。

今の日本は、食べることに困る子ども、経験すべき体験を奪われた10代20代の若者、健康で働いているにも関わらず最低限の生活が過ごせない労働者が存在し、誰もが罹りえる病に侵された時、年老いた時のセーフティネットであるはずの医療・介護・年金制度は崩壊の危機にあります。いのちと健康を守るためには、「自助・互助」するだけでは達成不可能で、権利としての社会保障の拡充をはじめ日本国憲法に基づいた政治を実現する必要があります。

こんな時に利用する