「最大多数の最大幸福」を超えて — 地方の小病院で挑む「番号呼び出し制」とジェンダー平等の使命
掲載日:2026年9月27日/更新日:2026年9月27日
公益社団法人京都保健会京都協立病院 院長 玉木 千里
地域医療と「ジェンダーフレンドリー病院宣言」
当院は、人口3万人弱、高齢化率が4割を超えるいわゆる「田舎」にある小病院です。
私たちはかねてより「ジェンダーフレンドリー病院宣言」を発出し、すべてのジェンダーに開かれた病院として、無差別・平等の医療を目指して活動を続けてきました。
その取り組みの一環として、今年8月からついに外来患者さんに対する「番号呼び出し制」を開始しました。
1. 導入までの苦労とアドボカシーの意志
ここに至るまでには、実にさまざまな苦労がありました。システムの更新に費用がかかるだけでなく、高齢の患者さんが多い地域柄、次のような反対意見も根強く存在していたのです。
- 「番号で呼ばれても自分だとピンとこないのではないか」
- 「番号をなくしてしまってわからなくならないか」
しかし、性的マイノリティの方々のプライバシーを守り、安心して受診できる環境を整える「アドボカシー(権利擁護)」の観点から、この道こそが正しいと信じ、私は病院長という立場から導入を推し進めてきました。
2. 馴染みの患者さんから投げかけられた問い
ところが先日、長年通ってくださっている馴染みの患者さんから、思わぬ言葉をかけられました。「先生、この番号制、わしは好かん」
正面から否定され、思わずめんくらってしまいました。理由をお聞きすると、こうおっしゃるのです。「名前で呼んでくれるからこそ暖かみがあった。囚人じゃないのに番号で呼ばれると、人として扱われていない気がする」
その言葉にはっとさせられました。確かに、この患者さんだけでなく、同じような寂しさや違和感を抱いている高齢の患者さんは少なくないはずです。地域医療において、名前を呼び合うことが与えていた安心感やぬくもりの大きさを痛感させられる出来事でした。
3. 「最大多数の最大幸福」が抱えるリスク
もちろん、誰もがハッピーになれる方法があれば、それが一番です。
しかし、哲学者のベンサムが唱えたような「最大多数の最大幸福」をそのまま適用してしまうと、多数派の利便性や快適さの陰で、マイノリティが再び「見えない存在」として追いやられてしまうリスクがあります。そしてそれは、私たちが目指す「ジェンダーフレンドリー病院」のあり方や姿勢に反するものです。
対応方針
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4. 誰もが自分らしく安心して受診できる環境づくりへ
やはり、マイノリティに優しい病院こそが、すべての人にとって本当に良い病院なのだと確信しています。
だからこそ、マジョリティの患者さんに対しても、
- 「なぜこのような取り組みを行っているのか」
- 「性的マイノリティのプライバシーや権利を守ることがなぜ重要なのか」
を粘り強く伝え続け、理解と協力を求めていく姿勢が不可欠です。それこそが、ジェンダー平等と無差別平等を掲げる私たちの真の使命なのだと、改めて胸に刻みました。
これからも地域に根ざしながら、誰もが自分らしく安心して医療を受けられる病院づくりに邁進してまいります。







